逆浸透システム大研究■3

◆逆浸透膜(ROメンブレン)の構造と機能
ウイスキーもたちまち真水となる
より小さな分子を分離するためには、こしわけに限界のある濾過方式が使えないことから、さらに目の細かい濾材の研究がなされました。そして開発されたのが半透膜による浄水システムです。
昔は、赤血球、白血球、酵素などの、いわゆる生体高分子化合物などの分離には、牛の膀胱膜や魚の浮き袋などが用いられていましたが、現在では生体の持つ細胞膜に匹敵する人工の半透膜が開発され、産業や医療の分野で広く活用されています。
この、逆浸透の機能を持つ人工の半透膜を「逆浸透膜」といい、この膜の特性を応用したのが逆浸透浄水器です。逆浸透システムは、別名「RO(アールオー)システム」とも称されます。これは逆浸透を意味する英語、Rivers Osmosis(リバース・オスモシス)の頭文字を取ったもので、関係者の多くは、製品をRO浄水器、逆浸透膜をROメンブレン、つくられる逆浸透水をRO水と呼びます。
逆浸透浄水器は、水道の水圧、あるいは加圧ポンプによって逆浸透現象を起こし、水道水を逆浸透膜に押しつけて水の分子だけを取り出します。水道水中の不純物は、いかにその分子が小さくても逆浸透膜にはじかれ、水の流れとともに「廃棄水」として器外に排出されてしまいます。

逆浸透膜はどんな働きをするのか
現在、使用されている逆浸透膜は、いわゆる「非対称膜」と呼ばれる膜の一種で、実際の分離は膜の表面の、厚さ0.1~0.15ミクロンのスキン層と呼ばれる非常に薄い膜によって行われます。逆浸透膜の本体を構成しているスポンジ属は、スキン層を支持して強度を保つための役目を果たしているだけです。

逆浸透膜の分離除去のメカニズムとプロセス
逆浸透膜があらゆる物質を分離除去するしくみについては、いまだ理論が固まっておらず、たんに物質のサイズだけで語れるほど単純なメカニズムにはなっていません。
まず、水の分子が逆浸透膜を透過できるのは、逆浸透膜の細孔のサイズが0.0005ミクロン(200万分の1ミリ)であるのに対し、水の分子が0.0003ミクロン程度と、逆浸透膜の細孔よりも小さいからで、これは誰にでも理解できます。しかし、水の分子とおなじか、それよりもさらに小さなサイズで水に溶け込んでいるイオン状の重金属やミネラル、塩素なども、逆浸透膜は確実に除去します。
なぜ、そうしたことが可能なのかについてはいくつかの説があります。
その代表的なものが、膜素材の分子に溶媒である水分子が水素結合して、つまり、水分子の層を形成して細孔の直径を実質的に小さくしているため、溶質であるイオンは入り込めず、逆浸透膜の細孔を透過するのは水分子だけとなるという説です。 さらに、プラスとマイナスに分極した水分子が、同じくプラス、マイナスの電荷を帯びたイオンと引き合ってイオンに取り付き、そのためにイオンの構成半径が大きくなって逆浸透膜の細孔を通過できなくなるという説もあります。他にも、水の分子と不純物との拡散速度の差により、膜の内部で分離が行われているという拡散説などもあり、実際はそれぞれの現象が複雑にからみ合って分離が行われていると考えられています。 一般的に述べられている逆浸透膜の細孔のサイズについても、当サイトでは0.0005ミクロンと記していますが、0.0001ミクロンとというオーバースペックな表現をしている業者などもいます。実際のところ、分子原子レベルの大きさのものは常に振動していて、電子顕微鏡で見てもそのサイズを測ることはできません。したがって、膜の細孔のサイズについての表現のちがいは、素人にわかりやすく説明するための推測値ということができます。

見比べてください…逆浸透膜の細孔と物質のサイズ

