タイトル画像

★人のからだは水でできている
人体の60%以上は水

いかに「水」とうまくつきあっていくか。それが健康でありつづけるための要件といえます。だからこそ、多くの人は水にこだわるのでしょう。

きれいな水はよりよい健康のもと――これは、1955年、WHO(世界保健機関)が各国に向けて掲げたキャッチフレーズですが、生理学や医学のうえではそれが立証されています。というのも、人間はおろか生物体のすべては「水の集まり」だからです。

水中花
水が体重に占める割合は、成人で約60%~66%です。そのうちの3分の2は細胞内液で、残りが血漿や組織間液などの細胞外液となっています。新生児では体重の80%が水です。体内を見ても血液の90%以上が水であり、心臓も肺もその80%が水分です。また、脳も75%が水で、毛髪や爪や骨にも水が含まれています。まさに人間のからだは水そのものであり、その水によって生命は維持されているのです。

からだの中の水は体内をくまなく循環し、生物が生きていくのに必要な栄養素や酸素をからだのすみずみにまで送り込みます。そして、体組織の活動をうながして新陳代謝を活発にし、細胞をみずみずしくさせます。さらに、からだにとって無用有害な物質を溶かし込んで体外に排出するのも水の重要な役目です。

WHOのキャッチフレーズ通り、きれいな水が健康のもとというのはそうした水の働きを考えれば当然のことで、普段なにげなく口にしているなんの変哲もない無色透明の水も、「たかが水」ではけっしてないのです。

体内での水の収支と役割

ところで、人間の体内では1日にどれほどの量の水が利用されているのでしょうか。ある推計によると、成人で1日に延ベ180リットルという膨大な量にのぼるというから驚きです。これに対し、1日にからだを出入りする水の量はおよそ2リットル程度です。こうしてみると、からだの中で一度使われた水のほとんどが効率よく繰り返し再利用されているということがよくわかります。

水の収支
ここで、われわれが毎日からだに取り入れ排出している約2リットルの水の収支を見てみます。まず、からだに取り入れている水は飲料=1.2リットル、食物=0.6リットル、代謝水(食物が体内で酸化してできる水)=0.2リットルで、合計2リットルになります。

からだから出ていくほうは、尿=1.2リットル、不感排泄(呼吸や汗として自然に出される水)=0.7リットル、便=0.1リットルとなり、やはり合計2リットルで、からだに入る水と出る水は同量となっています。

もちろん体格や性別、体調、運動量、季節などのちがいにより、水の出入りの量には多少の増減はあるものの、健康を維持するためには2リットル程度の水はどうしても必要なのです。あとは、その日に取り入れた水の量によって尿や汗としての排泄がコントロールされ、出入りのバランスは一定に保たれます。

こうして、水分の補給と排出とがイコールになることによって人間は生きていけるわけで、まさに水の流れは生命の流れなのです。一見、透明である水には特徴などないように思えますが、その実、さまざまな特徴を備えています。これは特徴というよりも、水が持つ根源的な働きといったほうがいいかもしれません。

そのひとつとして融解力の大きさが挙げられます。水ほどいろいろな物質を取り込み、また、他の物質に溶け込むものはありません。ガラスのコップの水を長い年月放置しておくと、いつしかガラスの成分が水に溶け出すほどの溶解力を有しています。水の非常に大きな溶解力は、炊事や洗濯、風呂などといった日常生活でもいかんなく発揮され、あらゆる汚れを溶かして流し去る働きをしています。

この水の役割は細胞間でもおなじことで、細胞は細胞外から水を血液として取り込み、老廃物を溶かして排出します。そして、水が溶かすのは老廃物などの汚れだけではなく、外から取り込んだ栄養分も溶かし、それをからだの各部位に運搬する役目も担っています。

また、水は熱伝導性が非常に高く、外界の気温に大きく左右されることなく体内の体温を一定に保つ働きをします。暑いときには汗として熱を放出させ、寒いときには血管と立毛筋を収縮させて熱を逃がさないようにもします。これは、ホメオスタシスと呼ばれる恒常的の人体を維持するための装置で、水は、体温などの生理機能を常に一定に保つために、人間にとってはなくてはならない重要な役割を果しているのです。

母線の飲む水が胎児に影響

母体は神秘そのものであり、その神秘に水は大きな関わりを持っています。1960年代、妊娠初期につわりの治療薬を服用した母親から、手の短い奇形児が生まれるという痛ましい事件が起こりました。いわゆるサリドマイド禍です。サリドマイドは、1957年に西ドイツで安全な睡眠薬として発売されたのですが、1961年、同じ西ドイツのレンツ博士によってその安全性に警告が発せられ、ただちに世界中で販児が生まれてしまったのです。

妊婦
この事件に見るまでもなく、母親がからだに取り込んだ物質がそのまま胎児に決定的な影響を及ぼすことは確実であり、医師が妊婦に対してタバコや酒をやめるように告げるのも、生まれてくる子供に悪影響を与えることを恐れるからにほかなりません。

このことは、母親の飲む水についてもいえることです。母親がなにも知らず、発ガン性物質や農薬に汚染されている水、あるいは有害な食品添加物の入った市販の人工の水などを飲みつづけていたらどうでしょう。まちがいなくそれは胎児にも伝わっていきます。

羊水が100%水であり、受精卵の90%が水であることを考えれば、母親の飲む水の影響を胎児が強く受けるのは当然です。近年増えているといわれる異常出産や子供のアトビー性皮屠炎、小児ゼンソク、小児ガンなどが、母親の飲んでいる悪い水と無関係ではないといわれています。母親の飲む水が子供の運命を決定づけてしまうことの重大さを知ることです。万一の悲劇を引き起こさないために、飲む水は絶対に「安全」でなくてはなりません。

この、母親の飲む水と関連して、赤ちゃんの粉ミルクをミネラルウォーターでつくる母親がいると聞きます。好意で解釈すれば、水道水ではなんとなく不安だ、ならば、ミネラルウォーターで粉ミルクをと考える。買った水なら安心だし、ミネラル分も含まれているから赤ちゃんの栄養に役立つだろうと……。

乳児
これが誤りであることは、ここまで読み進めてきた方にはおわかりと思います。しかも、粉ミルクは牛乳を原料にしており、牛乳はミネラルの固まりなのです。そのミネラルをさらにミネラルで補強するというのでは、どう考えても、これはミネラルの過剰摂取という結論に達します。

案の定、一時期、そのことが問題提起されました。粉ミルクを発売している当のメーカーですら「粉ミルクのミネラル分をいかに減らすかを、長年、研究してきました。それをミネラルウォーターで溶かすのでは研究に逆行します。赤ちゃんは腎臓の機能が未熟なため、代謝に負担のかからないようにしないと」と答えているのです。

ミネラルとは、知っての通りカルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどの必須微量栄養素をいいますが、粉ミルクメーカーでは長年の研究の結果、改良を重ね、それを適量配分したものをつくり上げています。そこに、ミネラルウォーターが加えられれば配分のバランスをくずすことになりかねません。

ミネラルウォーターのミネラル分がいくら水道水と同程度とはいっても、外国産のように国産の10倍もの含有量のものもあるのです。知らぬこととはいえ、乳児に負担となる粉ミルクを与えしまうとは困ったものですが、母親たるもの、きちんとした知識を身につけ、赤ちゃんの健康をそこなわぬ育児法を心がけなくてはなりません。

次へ